快適な見え方を取り戻せる多焦点レンズ
近年の技術革新によって登場した「多焦点眼内レンズ」によって、白内障手術は、単に「水晶体の濁りを取り矯正視力を回復する」手術から「あきらめていた快適な見え方を手に入れる」手術へと進化しました。優れた多焦点眼内レンズ(3焦点)は手元・中間距離・遠くのいずれにも自然に焦点が合います。その最大のメリットは、手術後にメガネを掛ける頻度が少なくなり、見える範囲や行動範囲が広がることです。裸眼で遠くと手元の距離にもピントが合うため、これまで老眼鏡を使用されていた方にとっては老眼治療も兼ねた手術になります。
メガネを掛けずに見える範囲が広がる多焦点レンズは魅力的な眼内レンズですが、水晶体のように自由自在に厚みを変えてどんな距離にもピントを合わせるほどの調節力はありません。そのため若い頃のような状態(正視の場合)を完全に再現するのは不可能です。したがって、一ヶ所の見え方の質にこだわるのではなく、見える範囲を広げて「なるべくメガネを使わないで生活できればいい」程度の気持ちの方には非常に満足度の高い眼内レンズです。
多焦点レンズの特徴
多焦点眼内レンズには、一般的に下記の特徴があります。特徴をご理解し、ご自身にとってその特徴がどの程度デメリットと感じるか、多焦点レンズのメリットと比較・ご検討いただき、レンズの選択にお役立てください。
単焦点眼内レンズに比べるとコントラストが少し低下する。
多焦点眼内レンズは、単焦点眼内レンズのピントが定まった距離の視界と比較すると、コントラストが劣ることがあるといわれています。コントラストとは映像のシャープさや、微妙な濃淡のことをいいます。したがって、単焦点眼内レンズよりピントが少し曖昧になり、ややにじんで見える感じがします。ただし日常生活レベルにおいては特に問題はありません。緻密な業務をされるご職業の方や趣味で手元の細かい作業が多い方は慎重にご検討ください。
夜間のハロー・グレア
多焦点眼内レンズは、単焦点眼内レンズに比べて夜間に光を見たときに光がにじんだり、まぶしかったりする「ハロー」や「グレア」が起こりやすくなります。多くの方はこの現象を感じることはあっても、生活や仕事に影響するような程度になることは少ないです。また時間が経過するに伴い、気にならなくなる方も多くいらっしゃいます。職業がドライバーの方で特に夜間の運転が多い方は、慎重にご検討ください。
慣れるまで時間を要する場合がある。
人は目でものを見ていると思いがちですが、実際は目から送られた情報を脳が処理して見ています。そのため、多焦点眼内レンズを通じて得られた像が脳に慣れるまで時間がかかる場合があります。遠方視力は術翌日に回復しますが、近方視力は患者様のご年齢にもよりますが、1~4週間のうちに徐々に向上します。単焦点眼内レンズよりも視力回復がゆっくりであることも予めご理解ください。