2025年11月28日
40代になると「最近文字が見えづらい」「視界がかすむ」と感じる人が増えています。年齢による変化だと思われがちですが、実際には生活習慣の影響や、目の病気が関係している場合もあります。加齢による老眼だけではなく、白内障や緑内障などの疾患が潜んでいることもあるため、自己判断で放置せず、早めに眼科で検査を受けることが大切です。
この記事では、40代で急に視力が落ちる原因を整理します。見え方に違和感を覚えたときのセルフケアや受診の目安も紹介するので、視力が落ちてきたことにお悩みの方はぜひ参考にしてみてください。
この記事で分かること
- 40代で視力が落ちやすい主な理由
- 視力低下を引き起こす代表的な目の病気
- 日常でできる視力ケアと予防のポイント
40代で「急に視力が落ちた」と感じる人が増える主な理由
40代は、加齢により目のピント調節機能が徐々に衰え始める時期です。水晶体(すいしょうたい)と呼ばれるレンズの弾力が低下し、ピントを合わせる毛様体筋の働きも弱まることで、近くの文字が見えづらくなる「老眼(老視)」のような症状を感じる人が増えていきます。
このような見え方の変化は、誰にでも起こり得る自然な加齢現象の一つですが、生活習慣によっても視力の低下を感じることがあります。例えば長時間のパソコン作業やスマートフォンの使用、睡眠不足、目の乾燥などが続くと、目の筋肉が疲れて一時的にピントが合いにくくなることがあるでしょう。
またストレスや自律神経の乱れによって、目の血流が悪化し、かすみや見えにくさを感じることも考えられます。これらの要因が重なり「急に視力が落ちた」と感じるケースも少なくありません。 多くの場合は一時的なもので、休息や環境の見直しで改善することがありますが、症状が続く場合はやはり老眼の可能性がある他、病気が関係している可能性もあります。見え方に違和感があるときは早めに医療機関を受診し、原因を確認することが大切です。
老眼(老視)が起こる仕組み
老眼は、加齢によって水晶体の弾力が失われ、ピント調節に関わる毛様体筋の働きが弱くなることで起こります。水晶体は若い頃ほど柔らかく、年齢とともに硬くなり、ピントを合わせる範囲が狭くなっていきます。その結果、近くの文字や小さな文字がぼやけて見えたり、かすんで見えたりするようになるのです。
この仕組みにより、遠くは見えても近くが見えにくいという特徴が現れます。特に40代以降は「本を遠ざけないと読めない」「パソコン画面の文字がかすむ」といった症状を自覚しやすいです。
老眼は完全に防ぐことはできませんが、遠近両用眼鏡などを使用すれば見え方を補えます。無理に裸眼で過ごそうとせず、目の負担を減らす工夫を取り入れることが、快適な生活を保つポイントです。
40代の視力低下には「目の病気」が潜んでいる可能性も
40代で継続的な視力の低下を感じる場合、その全てが老眼によるものとは限りません。加齢による変化に加えて、目の病気が原因となることもあります。例えば休息を取っても改善しない場合や、片目だけ見えづらい場合、急に視界がかすむなどの症状が続く場合は、白内障や緑内障などの病気が関係しているのかもしれません。病気の進行によっては、自覚症状が少ないまま視野が狭くなったり、見え方が変化したりするケースもあるため、気づいた時点で医療機関を受診することが大切です。
ここで、考えられる主な病気を紹介します。
白内障
白内障とは、目の中でレンズの役割を果たしている「水晶体(すいしょうたい)」が濁ることで視力が低下する病気です。水晶体は、タンパク質などからできた透明な組織で、通常は光を通して網膜に像を結ぶ働きをしています。しかし何らかの原因によって水晶体の透明性が失われると、光がうまく通らなくなり、視界がかすむ・ぼやける・まぶしく感じるといった症状が現れることがあります。
原因の中でも多いのは加齢によるものです。個人差はありますが、40代頃から少しずつ水晶体が白く濁り始め、80代になると大半の人に何かしらの白内障の兆候が見られるとされています。こうした変化は自然な老化現象の一つでもあります。
白内障が進行すると、視力低下によって日常生活に支障を来すかもしれません。症状の程度や進行に応じて、点眼薬による経過観察や、医師の判断の下で手術を行います。
緑内障
緑内障とは、目から入った情報を脳へ伝える「視神経(ししんけい)」が障害され、視野(見える範囲)が徐々に欠けていく病気です。日本では中途失明の原因の第1位とされており、40歳以上の約5%が緑内障を有するといわれています。視神経の繊維が集まる部分を「視神経乳頭(ししんけいにゅうとう)」と呼び、この部分の凹み(視神経乳頭陥凹)が大きくなると、視神経の損傷が進んでいる可能性があります。眼底検査によって、この変化を確認することが可能です。
緑内障は進行がゆるやかな場合が多く、初期は自覚症状がほとんどないこともあります。視野の一部が欠ける「暗点」が広がると、見える範囲が狭くなったことに気づくでしょう。一方で、急に眼圧が上昇する「急性緑内障発作」というものもあり、この場合は眼の痛みや充血、かすみの他、頭痛や吐き気といった症状を伴うこともあります。このような症状が現れた場合は、早めに眼科を受診することが大切です。
緑内障の治療は、病気の進行を抑えることを目的に行われます。現在、科学的に有効性が確認されている唯一の方法は「眼圧を下げる治療」とされており、点眼薬などが使用されることがあります。定期的な検査で変化を早期に把握し、適切な管理を続けることが重要です。
糖尿病網膜症
糖尿病網膜症とは、糖尿病によって眼底に出血やむくみが起こる病気です。糖尿病の三大合併症の一つとされ、日本では成人の失明原因の上位に挙げられています。血糖値の高い状態が続くと、網膜の血流が悪化して通常よりももろい「新生血管」が生じることがあり、これが出血や増殖組織の形成を引き起こし、視力の低下につながる場合があるのです。
糖尿病網膜症は進行性で、一般的に「単純網膜症」「増殖前網膜症」「増殖網膜症」の3段階に分類されます。進行すると視力に影響を及ぼすことがあるため、糖尿病と診断された場合は、定期的な眼科検査を受けることが大切です。
網膜剥離
網膜剥離は、網膜が眼球の内側から剥がれてしまう病気です。網膜は光を感じる膜で、剥がれても痛みを感じることはほとんどありませんが、放置すると視力に重大な影響を及ぼす可能性があります。網膜剥離の多くは、神経網膜に小さな裂け目(裂孔)ができる「裂孔原性網膜剥離」というものです。また裂け目を伴わずに発生する「非裂孔原性網膜剥離」というものもあります。
症状としては「視界の一部が黒く見える」「光が走るように見える」などが代表的です。早期に発見して治療できれば、視力への影響を抑えられる可能性があるため、見え方の異常を感じたら早めに医療機関を受診しましょう。
加齢黄斑変性症
加齢黄斑変性症とは、網膜の中心にある「黄斑(おうはん)」と呼ばれる部分に異常が生じる病気です。黄斑は、ものを見るための細胞や神経が集中しており、視力を支える重要な領域です。加齢によって黄斑が萎縮したり、もろくて破れやすい「新生血管」が生じたりして、視野の中心が欠ける、ものがゆがんで見えるといった症状が現れることがあります。
加齢黄斑変性症の原因は、大きく「滲出型(しんしゅつがた)」と「萎縮型(いしゅくがた)」の2つです。滲出型では、新生血管の影響によって視力に変化が出やすく、治療として抗VEGF薬を用いた方法が行われることがあります。萎縮型は比較的ゆっくり進行しますが、現時点では有効な治療法が確立していないとされています。
受診・治療と併せて自分で行える工夫
視力の変化が続く、片目だけ見えづらいなど、普段と違う症状がある場合は、まず眼科での検査を受けることが大切です。その上で、日常生活の中でも目の負担を軽減する工夫を取り入れることで、疲れやすさの改善や再発予防につながるでしょう。最後に、生活の中で実践できる3つのポイントを紹介します。
ストレスを解消し規則正しい睡眠を取る
睡眠不足やストレスなど、生活リズムの乱れは目の疲労を強める要因になることがあります。特に仕事や家事で目を酷使する日が続くとピントを合わせる筋肉が緊張し、目のかすみや乾燥を感じやすくなるでしょう。
そのようなときは意識的に休息を取り、心身をリラックスさせる時間を設けることが大切です。睡眠を十分に確保し、入浴や軽いストレッチなどで血流を整えることも、目の負担軽減につながります。また度数の合わない眼鏡やコンタクトレンズを使い続けると、知らないうちに目に負担をかけてしまうため、定期的な視力チェックも心がけましょう。
デジタル機器の使い方を工夫する
パソコンやスマートフォンを長時間使用すると、目が乾燥したりピントを合わせる筋肉が疲れたりする「眼精疲労」の状態に陥りやすくなります。特に画面から発せられるブルーライトを長時間浴びることで、目の負担が増えるといわれています。
対策としては、画面の明るさを周囲の照明に合わせて調整し、目からの距離を40cm程度離すよう意識するのがおすすめです。また1時間に1回は画面から目を離して遠くを見る、まばたきを意識的に増やすといった工夫も効果的です。デジタル機器の使用時間が長すぎないか見直して、長時間の使用を避けるようにするだけでも、目の疲れが和らぐ場合があります。
食生活に気を付ける
栄養バランスの乱れは、体調だけではなく目の健康にも影響を与えることがあります。例えばビタミンAは目の粘膜や視機能の維持に関わる栄養素であり、緑黄色野菜やレバーなどに多く含まれる成分です。また、ルテインやアントシアニンなどの成分は、光の刺激から目を守る働きがあるとされています。
栄養バランスを改善するなら、特定の食品やサプリメントに頼るのではなく、日々の食事で野菜・果物・魚・肉などをバランスよく取ることが基本です。食生活の見直しと合わせて、定期的な健康診断や血糖値管理も意識するとよいでしょう。
まとめ
40代で「急に視力が落ちた」と感じる場合、考えられる原因は一つではありません。加齢による老眼の他にも日々の生活習慣やストレス、さらには白内障や緑内障などの目の病気が関係していることがあります。中には自覚症状が少ないまま進行する病気もあるため「疲れ目かもしれない」と自己判断せず、気になる症状が続くときは医療機関で検査を受けることが大切です。早い段階で原因を確認し、適切な対応を取ることで、症状の進行を防げる可能性があります。
視力の変化を感じた際は、ためらわず医療機関に相談してみましょう。東京都内で相談先を探している方は、白内障や緑内障など幅広い診療を行う秋葉原白内障クリニックへ、ぜひお気軽にご相談ください。
記事監修者について

眼科医 原田 拓二
医療法人社団廣洋会理事長
グループクリニックにて毎年2,000人を超える白内障患者の診察に従事。
また、年間700件以上のYAGレーザー治療(後発白内障)を行い、あらゆるタイプの白内障の術前・術後診療に精通する。
