2025年12月05日
網膜や硝子体の異常を治療する「網膜硝子体手術」は、視力や見え方に影響する重要な手術です。しかし「費用が高いのでは?」と不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
網膜硝子体手術は健康保険が適用される治療ですが、入院の有無や治療内容によって費用に差があります。そこで本記事では、手術の概要や費用の目安、公的制度の活用法、医療機関選びのポイントを分かりやすく解説します。ぜひ最後まで読んで参考にしてみてください。
この記事で分かること
- 網膜硝子体手術の概要と適応疾患
- 費用の目安と高額療養費制度の活用法
- 費用以外で確認しておきたい注意点
網膜硝子体手術とは?
網膜硝子体手術とは、目の奥にある「硝子体」や「網膜」に異常が起きた際に行う外科的手術です。硝子体とは眼球の中を満たすゼリー状の組織で、網膜は光を感じる薄い膜のことです。これらの組織が出血・炎症・剥離などを起こすと、視力低下やゆがみ、黒い影が見えるなどの症状が現れます。
網膜硝子体手術では、濁った硝子体や出血を取り除き、網膜を元の位置に戻します。この処置によって光が正しく網膜に届くようになり、視力や見え方の改善が期待されるケースも多いでしょう。 手術は顕微鏡下で硝子体を切除するため、網膜の位置を整える精密な手技が求められます。
網膜硝子体手術の適応となる主な病気
網膜硝子体手術の対象となる疾患はいくつかありますが、いずれも放置すると視力の回復が難しくなる可能性があるため、早期の受診・治療が重要です。ここでは代表的な疾患をいくつか紹介します。
黄斑前膜(網膜上膜)
黄斑前膜とは黄斑の表面に薄い膜が張る病気で、物がゆがんで見えたり、細かい作業がしづらくなったりします。進行すると膜が網膜を引っ張り、視力が低下するため、手術で膜を剥がす処置を行うのが一般的です。
黄斑円孔
黄斑円孔とは網膜の中心部(黄斑)に小さな穴が開く病気です。「中心がゆがんで見える」「文字の一部が欠けて見える」などの症状が特徴で、放置すると視力低下が進みます。手術で硝子体を除去し、穴をふさぐことで視機能の改善が期待できます。
糖尿病網膜症
糖尿病網膜症は、糖尿病による血糖値の高い状態が長く続き、網膜の血管が傷んで出血や新生血管の増殖につながっている状態です。重症化すると硝子体出血や牽引性網膜剥離が生じ、急激な視力低下を引き起こすこともあります。硝子体手術で濁った血液や異常な組織を除去し、網膜を整える治療が行われます。
裂孔原性網膜剥離
裂孔原性網膜剥離は網膜が眼球の内側から剥がれてしまう病気で、放置すると失明につながりかねません。初期には「黒い影が見える」「視界の一部が欠ける」といった症状が現れ、進行すると視力が急激に低下するため注意が必要です。1回手術を行うだけでは穴がふさがらず、何度か手術を繰り返すケースもあります。
硝子体出血・混濁
硝子体内で出血が起き、視界が赤く濁ったり、霞がかかったように見えたりすることがあります。自然に吸収されない場合や、原因が糖尿病網膜症・網膜裂孔などにある場合は、手術で血液を取り除くことが多いです。
水晶体落下
白内障手術や外傷などが原因で、水晶体が落下することがあります。そのまま放置すると炎症や網膜剥離、眼圧上昇を引き起こすかもしれません。落下した水晶体を除去し、必要に応じて人工レンズを再挿入して視機能を安定させる「眼内レンズ強膜内固定術」も行います。
網膜硝子体手術の費用
網膜硝子体手術は保険診療の対象です。手術費用は術式により大きく変動し、3割負担の場合、片眼で20万円近くになる場合もあります。また両眼を手術する際は単純に2倍前後の負担になる点も確認しておきましょう。
自由診療となるケース・特別費用が発生するケースも
網膜硝子体手術は基本的に保険適用ですが、個室入院料や特殊機器の使用料などが発生する場合があります。また先進的な設備の使用や、検査内容の追加によっても費用は前後します。
医療費の負担を軽減させるには、高額療養費制度の利用が有効です。この制度では、所得に応じて1カ月当たりの自己負担上限が定められており、限度額を超えた分は後日払い戻しを受けられます。 さらに、年間の医療費が10万円を超える場合は医療費控除の対象となり、確定申告で一部が還付されることもあります。
手術費用以外に知っておきたい注意点
網膜硝子体手術では、手術後1日目・1週間後・1カ月後と段階的に経過観察を行うことが一般的です。術後は一時的にかすみや異物感が出るケースもあり、炎症・感染・眼圧上昇・再剥離などのリスクもゼロではありません。そのため術後は医師の指示に従って定期的に通院し、点眼や検査を続けることが大切です。
また見え方が安定するまで数週間~数カ月を要する場合もあるため、術後のスケジュールにも余裕を持って臨むことが大切です。術後の通院やケアにも一定の期間と費用がかかるものなので、費用を考える際は、手術費用だけではなく通院・投薬・検査費用も含めて総合的に検討しましょう。
まとめ
網膜硝子体手術は、視力や見え方を守るために欠かせない重要な治療です。ただし手術後は一時的に見え方が不安定になる場合があり、眼圧上昇や感染、再剥離といった合併症が起こる可能性もあります。そのため術後は医師の指示に従って定期的に通院し、点眼や検査を続けることが大切です。また回復には数週間~から数カ月を要する場合があり、まとまった費用が必要となるケースもありますが、助成制度などをうまく活用して負担を軽減させましょう。 網膜や硝子体の異常に気づいたら、まずは早めに専門医へ相談を行うのがおすすめです。手術や費用について詳しく知りたい方は、秋葉原白内障クリニックへご相談ください。
記事監修者について

眼科医 原田 拓二
医療法人社団廣洋会理事長
グループクリニックにて毎年2,000人を超える白内障患者の診察に従事。
また、年間700件以上のYAGレーザー治療(後発白内障)を行い、あらゆるタイプの白内障の術前・術後診療に精通する。
