2025年12月11日
「最近、パソコンの文字がにじんで見える」「夕方になると視界がかすむ」など、日常の中で見え方の違和感を覚えることはありませんか。一時的な疲れや乾燥が原因のケースもありますが、中には目の病気が関係している場合もあります。
こうした症状を「そのうち治る」と放置すると、進行に気づかない恐れもあるため、自己判断は避けることが大切です。
本記事では、目がぼやける原因の考え方やセルフケアの方法、受診の目安を整理して解説します。見え方に違和感を覚えたときは、早めに医療機関で確認しましょう。
この記事で分かること
- 目がぼやける主な原因と関係しやすい病気
- 自分でできるケアと日常の見直しポイント
- 受診の目安と相談先の考え方
目がぼやける主な原因
「目がぼやける」とは、ピントが合いにくく、視界がかすんで見える状態のことを指します。人によって「にじむ」「焦点が合わない」「遠くが見づらい」など、感じ方が異なる場合もあるでしょう。 症状の出方にも個人差があり、両目で起こることもあれば片目だけの場合もあります。また一時的なものと慢性的なものでは原因が異なり、生活習慣や環境によるものから、目の病気が関係するケースまでさまざまです。
【一時的】生活習慣や環境によるもの
目がぼやけるものの一定期間の後に改善する場合、生活習慣や環境が悪影響を及ぼしている可能性が高いです。例えば睡眠不足やストレス、冷暖房による乾燥、パソコンやスマートフォンの使い過ぎなどが挙げられます。これらの要因によって、目の表面の潤いが失われたりピント調整を担う筋肉が疲れたりすると、一時的に見え方が不安定になることがあります。十分な休息を取り、作業環境を整えるなどの対策によって改善するケースも多いでしょう。
ただし同じ症状を繰り返す場合や長引く場合は、以下のような状態になっている可能性があるため医療機関で確認することが大切です。
ドライアイ
ドライアイは、涙の量や質のバランスが崩れて、目の表面が乾きやすくなる状態です。涙は目の表面を保護し異物を洗い流す役割を果たしていますが、涙の分泌量が減ったり蒸発しやすくなったりすると、目の表面に微細な傷が付きやすくなり、かすみや疲れを感じやすくなります。特にエアコンの風や長時間のパソコン作業、まばたきの減少などは、ドライアイの一因となることがあります。
眼精疲労
眼精疲労とは、目を酷使した状態が続き、十分に休んでも疲れが取れにくくなっている状態のことです。パソコンやスマートフォンの使い過ぎ、照明の明るさ、姿勢の不適切さ、眼鏡・コンタクトレンズの度数ずれなどが要因となり得ます。目の奥の痛みや重さ、かすみ、ぼやけに加え、肩凝りや頭痛といった全身の不調を伴うケースもあるでしょう。
【継続的】視力低下・屈折異常によるもの
視界のぼやけが続く場合、近視・遠視・乱視・老視といった「屈折異常」が関係している可能性があります。これらはいずれも、目に入る光が正しく網膜上で焦点を結ばないために、ピントが合いにくくなる状態です。
特に老視(老眼)は40代以降に多く見られ、近くのものが見えづらくなるなど、加齢に伴う自然な変化とされています。また眼鏡やコンタクトレンズの度数が合わなくなっていることも、視界のぼやけや目の疲れの一因となる可能性があります。
糖尿病網膜症
糖尿病網膜症は、糖尿病により網膜の血管がもろくなり、出血やむくみなどが起こる病気です。進行すると視力に影響することがあり、失明原因の一つとされています。網膜の血管からの出血やむくみにより光が正しく伝わらなくなって、目がぼやけたりかすんで見えたりすることがあります。
初期は自覚症状が少ないため、糖尿病を治療中の方は定期的な眼底検査が大切です。治療は病状に応じて行われ、一般的には医師の管理の下で血糖コントロールと併せた対応が行われます。
網膜剥離
網膜剥離は、目の奥の網膜が眼球の内側から剥がれてしまう病気です。視野の一部が欠ける、光が走るように見える(光視症)、小さな黒い点が増える(飛蚊症)などの症状が現れることがあります。網膜が剥がれる位置や範囲によっては、見える部分がぼやけたり、像がゆがんで見えたりすることがあります。
放置すると視力に大きな影響を及ぼす恐れがあるため、こうした変化を感じたら早めの受診が重要です。治療は医師が網膜の状態を確認した上で行われます。
加齢黄斑変性
加齢黄斑変性は、網膜の中心部にある「黄斑」が加齢などの影響で障害される病気です。ものの中心がゆがんで見える、暗く見える、欠けて見えるなどの症状が見られることがあります。黄斑の中心が障害されると細かい部分が見えにくくなり、全体的にぼやけて見えるように感じるでしょう。
黄斑変性には、進行の穏やかな萎縮型と、新しい血管ができて出血などを起こす滲出型の2つのタイプがあります。自覚症状を感じたら、早めに医療機関で検査を受けることが大切です。
自分でできるケアと予防のポイント
目のぼやけが生活習慣や環境によって一時的に起きている場合は、少しの工夫で症状を軽減させられる可能性があります。まずは目への負担を減らし、乾燥や疲労をためないよう意識しましょう。ケアや予防につながるポイントを2つご紹介します。
日常生活を見直す
パソコンやスマートフォンの画面を長時間見続けると、まばたきの回数が減って目の表面が乾きやすくなり、疲れにつながることがあります。作業の合間に休憩を取る、画面との距離を適度に保つ、照明の明るさを調整するなど、目にやさしい状況を維持することが大切です。
また米国眼科学会議が推奨する「20-20-20ルール」を試してみても良いでしょう。これは、20分ごとに20秒程度遠くを見て目を休ませるというものです。その他、空調の風が直接当たらないようにし、加湿器を利用するなど乾燥対策も有効です。まばたきを意識的に増やすのも、潤いを保つ上で役立つと考えられます。
こうした習慣の積み重ねが、目の健康維持や疲労予防につながるでしょう。
目薬を正しく使う
市販の目薬には、疲れ目の症状や乾燥を和らげる目的で使えるものがありますが、目的に合った製品を選ぶことが大切です。用法・用量を確認し、使用前には手を清潔にしておきましょう。点眼後はまばたきを繰り返さず、目頭を軽く押さえることで薬液が流れ出るのを防げます。ただし症状が続く場合や改善しない場合は、市販薬だけで対応しようとせず、医療機関で相談することをおすすめします。
気になる症状があるときは医療機関を受診しましょう
見え方の違和感が続く場合や、急に視界がかすむ・片目だけぼやけるなどの症状があるときは、早めに医療機関を受診して原因を確認してください。医療機関では視力検査や眼圧検査、細隙灯顕微鏡検査、眼底検査などを行い、角膜・水晶体・網膜など目のどの部分に異常があるかを調べられます。
検査の結果、ドライアイや屈折異常のように生活習慣や矯正で改善できるケースもあれば、白内障や緑内障などの病気が関係している場合もあるでしょう。その際は、医師の判断の下で適切な治療方法が検討されます。早期に相談することで症状の進行を抑えられるケースもあるため、放置したり自己判断したりせず、医師の診察を受けることが大切です。
まとめ
目のぼやけは、疲労や乾燥などの一時的な原因によるケースから、白内障・緑内障・糖尿病網膜症などの病気が関係するケースまで、幅広い要因で起こります。症状の多くは徐々に進行するため「少し見えにくいだけ」と感じていても、気づかないうちに悪化しているようなこともあり得ます。
もちろん、生活習慣の見直しや乾燥対策を行うことで改善するケースも多いです。大切なのは、見え方の変化を軽視せず、早い段階で原因を確認することです。特に片目だけ見づらい、視界の一部が欠ける、まぶしさや色の変化を感じるといった症状がある場合は、医療機関での検査を受けることをおすすめします。
目の健康は生活の質に直結します。早期発見・早期対応によって、見づらさが深刻化するのを防げることもあるでしょう。違和感に気づいたときは、無理をせず専門医に相談することが大切です。現在、見え方に悩みを感じている方は、秋葉原白内障クリニックへお気軽にご相談ください。
記事監修者について

眼科医 原田 拓二
医療法人社団廣洋会理事長
グループクリニックにて毎年2,000人を超える白内障患者の診察に従事。
また、年間700件以上のYAGレーザー治療(後発白内障)を行い、あらゆるタイプの白内障の術前・術後診療に精通する。
