2025年12月13日
白内障手術は、視力の回復を目的として行われる治療です。現在では手術を受けた多くの方が良好な視力を取り戻しており、日常生活の質を大きく向上させています。一方で、術後の経過中には、見え方の変化や一時的な違和感を覚えることがあります。これらの症状はほとんどが一過性ですが、まれに合併症として治療を要する場合もあるため、正しい知識を持って経過を見守ることが大切です。
本記事では白内障手術後に見られる代表的な症状や合併症、術後ケアの基本を解説します。手術を控えている方や術後の経過に不安を感じている方は、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。
この記事で分かること
- 白内障手術後によく見られる見え方の変化
- 手術後に起こる可能性のある合併症と注意点
- トラブルを防ぐために知っておきたい術後ケア
白内障手術後に起こることがあるトラブルとは
濁った水晶体の代わりに人工の眼内レンズを挿入する白内障手術は、多くの方が視力の改善を実感している治療法です。ただし、術後の経過の中で一時的に見え方が変化したり、目の状態に違和感を覚えたりする場合もあります。
こうした症状の多くは一過性のものであり、時間の経過と共に改善することが一般的です。
しかし、まれに合併症が生じる可能性もあるため、経過を観察しながら医師の指示に従ってケアを続けることが大切です。
白内障手術後によく見られる見え方の変化
まずは、代表的な変化を4つご紹介します。術後の経過観察の参考にしてください。
視界のかすみやぼやけ
白内障手術の直後は、眼の中の状態が落ち着くまで視界がかすんだり、ぼやけて見えたりすることがあります。このような症状は、傷口の回復や眼の炎症などによる一時的なものであるケースが多く、日を追うごとに改善していくのが一般的です。しかし数週間経過してもよくならない場合は、後述する後発白内障が起きていることも考えられるので、医師に相談しましょう。
光のにじみ・まぶしさ(グレア・ハロー)
白内障の手術後に、ライトや太陽の光がにじんで見える、まぶしく感じるといった症状が出ることもあります。これは、眼内レンズが入った直後に光の通り方が変化するために起こり、一時的な反応の場合が多いです。また使用する眼内レンズの種類によっても、光の感じ方に違いが見られます。見えにくさが続き、日常生活に支障が出る場合は受診して相談することをおすすめします。
色の見え方が変わる
白内障手術によって濁った水晶体が除去されると、術後は色が明るく、特に青みが強く感じられることがあります。これは、白内障によって遮られていた光が通るようになるためで、異常ではありません。多くの人は時間の経過と共に見え方に慣れていくでしょう。見え方の違和感が長く続く場合は、医師に相談することがおすすめです。
黒い点や糸くずが見えるようになる(飛蚊症)
白内障の手術後には「黒い点が動いて見える」「糸くずのような影が視界に浮かぶ」と感じることがあります。これは硝子体の濁りなどが影として映る現象(飛蚊症)によるものです。急に数が増えたり、視界が暗くなったりなどの変化がある場合を除き、基本的には経過観察で問題ないでしょう。
白内障手術後に起こる可能性があるトラブル
白内障手術は確立された治療法といわれていますが、医療行為である以上、ごくまれにトラブルが生じることがあります。多くは早期の対応で改善が期待できるため、異常を感じた場合は自己判断せず、すぐに医療機関へ相談することが大切です。代表的な合併症を紹介します。
後発白内障(後嚢混濁)
白内障手術では、水晶体を包む膜の一部(後嚢)を残して眼内レンズを挿入します。術後しばらくして、この後嚢が濁ってしまうと「後発白内障(後嚢混濁)」が発症します。発症までの期間には個人差があり、数カ月で発生するケースがある一方、数年後に生じることも少なくないです。視力の低下やまぶしさの再発がみられることが特徴です。治療はレーザーを用いた後嚢切開術で行われ、外来で短時間のうちに実施できます。
眼内炎(感染症)
白内障の手術後に細菌が侵入して炎症を起こす「眼内炎」は、まれではありますが重篤な合併症の一つです。主な症状として、強い痛みや充血、急な視力低下などが挙げられます。発症が疑われる場合は時間を置かず、早急に医療機関を受診しましょう。治療は抗菌薬の点眼や注射が行われる他、場合によっては硝子体手術が行われます。
黄斑浮腫(嚢胞性黄斑浮腫)
白内障手術後の炎症反応によって、網膜の中心部(黄斑部)がむくみ、見え方が歪む、中心がぼやけるなどの症状が出ることがあります。これは「嚢胞性黄斑浮腫」と呼ばれる合併症です。点眼薬や内服薬で炎症を抑える治療が行われ、ほとんどの場合は徐々に回復が見られます。
眼内レンズのずれ・位置異常
白内障の手術後に、挿入した眼内レンズが、時間の経過と共にわずかにずれることがあります。レンズの位置がずれると、視界の歪みや二重に見えるといった症状が現れる場合があります。ずれの程度によっては経過観察で済むこともありますが、症状が強い場合はレンズの位置を調整する再手術が必要です。術後に見え方の違和感がある際は、早めに医療機関を受診しましょう。
レンズの種類による見え方の違い
白内障手術で使用するレンズの種類によっても、術後の見え方や光の感じ方には違いがあります。大きく単焦点眼内レンズと単焦点眼内レンズの2種類があり、それぞれ異なる特徴を持っています。
一般的な単焦点眼内レンズは焦点が合う範囲が限られていますが、光のにじみやまぶしさを感じにくいです。
一方の多焦点眼内レンズは遠くと近くの両方にピントを合わせられるため、眼鏡を使う機会を減らせるでしょう。ただし注意点として、光のにじみやまぶしさを感じやすくなる可能性があります。さらには多焦点眼内レンズ自体にもいくつかの種類があり、より焦点の数が多いものや違和感を軽減できるよう工夫されたものなど、それぞれ見え方が異なります。
どういったレンズを選ぶべきかは、生活スタイルや目的によって異なるため、手術前に医師とよく相談して決めることが大切です。
手術後のトラブルを回避するためにできること
白内障手術後のトラブルを防ぐためには、手術前から十分な理解と準備をしておくことが大切です。手術を受ける際は、医師から術式や使用する眼内レンズの特徴についてしっかり説明を受け、納得した上で選択しましょう。先述の通り単焦点眼内レンズと多焦点眼内レンズでは焦点距離や見え方が異なるため、自分の生活スタイルに合ったものを選ぶことが重要です。
また手術直後は、眼の回復を妨げないよう目に負担をかけない生活を心がける必要があります。医師から処方された点眼薬は、決められた期間と回数を守って使用することが基本です。また洗顔・洗髪・入浴・運動・メイクなどは、眼の状態を確認しながら段階的に再開しましょう。医療機関の多くでは、洗顔や洗髪は数日後、運動やメイクは1〜2週間後を目安に再開可能としています。実際の期間は、施術を担当した医師の指示に従ってください。
なお日常生活では、目をこすらない、汚れた手で触れない、外出時にほこりや風を避けるなど、感染予防の意識を持つことが大切です。適切なケアと注意を続ければ、手術後の回復がよりスムーズになるでしょう。
まとめ
白内障手術後のトラブルには、一時的な見え方の変化から、まれに起こる合併症までさまざまな種類があります。多くの症状は時間の経過や治療によって改善しますが、経過観察中も不安を感じた場合は、放置せず早めに医師へ相談することが重要です。特に視界が急にかすむ、光が強くまぶしく感じる、黒い点が増えたなどの変化が見られたときは、自己判断をせず早めに受診してください。
また白内障の手術後の経過を良好に保つためには、医師の指導の下で点眼薬を正しく使用し、生活上の注意を守ることが欠かせません。洗顔やメイク、運動などは、眼の回復状態を見ながら再開する必要があります。炎症や後発白内障などの再発リスクに備えるため、定期的な検診を受けて眼の状態を確認しておくことも大切です。
白内障手術を検討している方や、術後の経過について詳しく知りたい方は、専門的な診療体制と丁寧な術後ケアを行っている秋葉原白内障クリニックへご相談ください。経験豊富な医師が、お一人おひとりの症状や生活に合わせた提案を行います。
記事監修者について

眼科医 原田 拓二
医療法人社団廣洋会理事長
グループクリニックにて毎年2,000人を超える白内障患者の診察に従事。
また、年間700件以上のYAGレーザー治療(後発白内障)を行い、あらゆるタイプの白内障の術前・術後診療に精通する。
