2025年4月30日
白内障手術は濁った水晶体を取り除き、透明な眼内レンズを挿入する手術です。今回は、白内障手術はどのようなタイミングで受けるのが望ましいかについてお話します。
白内障は一度発症してしまうと進行するだけで、更に見え方が悪くなることはあっても、放っておいて良くなることはありません。よく、点眼液で白内障が治ると誤解されている患者さんもいらっしゃいますが、点眼液で白内障は治りません。進行を遅らせるのに一定の効果は期待できますが、最終的には手術治療でしか完治できません。
では、いったい、いつ、どのようなタイミングで手術を行うのが適切なのでしょう。ご自身ではまだ、見え方に不自由がないのに、主治医から白内障手術を勧められて戸惑っている方もいるかもしれません。眼科医は大まかに以下のようなタイミングで手術をお勧めするというポイントをお伝えします。
1.症状から見て手術を推奨するケース
① 矯正視力が0.7未満(運転免許の更新ができない)の場合
普通免許は視力が片目0.3以上、両眼で0.7以上が条件になっています。免許更新をされる場合、この条件をクリアしなければいけませんので、矯正視力が0.7未満の方には手術を推奨します。
② 白内障による症状で生活に支障がある場合(視力低下、かすみ、まぶしさなど)
視力が良くても自覚症状によって日常生活で困る事があれば、その時も手術を考えるタイミングです。例えば、視力検査では1.0の視力でも、夜間の運転の時に対向車のライトがまぶしくて運転が怖いと感じるような場合も手術を推奨します。
③ 屈折矯正(目の度数の改善)を目的とする場合
近視や乱視、老眼(遠視を含む)の度数が強くて、厚い眼鏡をかけ続けたくない、と考える方は早めに手術を考えて良いケースです。眼内レンズの度数が合う方ならば、多焦点眼内レンズを挿入することで、眼鏡への依存度が格段に減少します。単焦点眼内レンズを選択して頂いても、眼鏡の度を弱くできます。眼鏡が軽くなり、眼鏡による歪みも解消されて楽になるので手術を推奨します。
2.医学的に手術が必要なケース
④ 緑内障発作を起こした、または起こしそうな場合
角膜と虹彩の間の空間を前房と呼び、前房が狭い状態のことを浅前房と言います。このような目の状態の方は、ある日突然、眼圧(目の中の圧力)が上がって、急激な視力低下や眼痛、人によっては頭痛や吐き気を起こす急性緑内障発作になる危険性があります。これはレーザー治療で予防することが可能ですが、根本的な予防治療として白内障手術を行った方が良いケースがあります。白内障手術により水晶体を取り除き、代わりに人工のレンズを挿入することで、虹彩と角膜の間の角度が広がり、房水の流出が改善されます。これは元々の水晶体に比べて、眼内レンズは薄くボリュームが減るため、手術前よりもずっと隅角が開きやすくなるためです。
⑤ 白内障以外に目の病気がある場合
眼球の奥には、硝子体・網膜・視神経と言った組織があります。これらの部位に異常があると視力障害の原因となります。病気の早期発見や治療・経過観察を行うためには、眼底検査と呼ばれる目の奥を観察するための検査が必要です。例えば糖尿病や高血圧が原因で起こる眼底出血、緑内障や黄斑変性症といった眼疾患が該当します。そのような病気を調べる検査は水晶体が濁っているときちんと行えないため、眼科医は白内障手術を勧めることがあります。そのような説明があった場合は、医師から納得いくまで、説明を受けてから手術をご検討下さい。
このように白内障手術は、様々な状況や目の状態で最適な時期に治療を行う必要があります。当院では、患者さま一人一人の目の状態に合わせた治療をご提案するように心がけておりますので、何かご不明な点があれば、医師とよく相談の上で手術をご検討されると良いでしょう。
記事監修者について

眼科医 原田 拓二
2008年に秋葉原白内障クリニックの院長に就任以降、
毎年2,000人を超える白内障患者の診察に従事。
また、年間700件以上のYAGレーザー治療(後発白内障)を行い、あらゆるタイプの白内障の術前・術後診療に精通する。