2025年12月08日
白内障手術で使用するレンズには複数の種類があり、焦点の合う距離や見え方がそれぞれ異なります。どのレンズを選ぶかによって、術後の見え方や日常生活の快適さに大きく影響するため、特徴を理解して選ぶことが大切です。
本記事では、白内障手術で使われる眼内レンズの種類や特徴、選び方のポイントを解説します。自分に合ったレンズを見つけるために、医師との相談の重要性もあわせて確認していきましょう。
この記事で分かること
- 眼内レンズの基本的な仕組みと役割
- 単焦点・多焦点・乱視矯正レンズの違い
- レンズを選ぶ際に考慮すべきポイント
白内障手術と眼内レンズの基本
白内障手術は、濁ってしまった水晶体を取り除き、その代わりに人工の「眼内レンズ(IOL)」を挿入することで視力を回復させる治療です。水晶体は本来、カメラのレンズのように光を取り込み、ピントを調整する役割を担っています。加齢や疾患の影響で水晶体が濁ると、視界がかすんだり、光をまぶしく感じたりするようになります。
手術によって濁った水晶体を透明な眼内レンズに置き換えることで、光が再びスムーズに通り、視界の明るさや鮮明さを取り戻すことが可能です。挿入するレンズの種類次第で焦点の合う距離や見え方が異なるため、レンズ選びは術後の見え方に大きく関わるでしょう。
眼内レンズの主な種類と特徴
白内障手術で使用される眼内レンズは、大きく「単焦点レンズ」「多焦点レンズ」「乱視矯正用トーリックレンズ」の3種類に分けられます。それぞれの焦点の合う距離や見え方には特徴があり、選ぶレンズによって術後の視界や生活のしやすさが異なります。
単焦点レンズは健康保険が適用される一般的なレンズです。また多焦点レンズや乱視矯正レンズは自由診療となる場合があります。どのレンズが適しているかは、視力の状態や生活スタイルを踏まえて医師が総合的に判断します。
単焦点眼内レンズ
単焦点眼内レンズは、焦点を1つの距離に合わせるタイプのレンズです。遠くに焦点を合わせるか、近くに焦点を合わせるかを手術前に選択しなければなりません。例えば、遠方に焦点を合わせた場合は遠くが見えやすくなりますが、手元を見る際には老眼鏡などの補助が必要になることがあります。
このタイプのレンズは、健康保険が適用される標準的な眼内レンズであり、多くの医療機関で使用されています。構造がシンプルなため、光の分散が少なく、鮮明な見え方が得られるのが特徴です。
ただし、焦点を合わせられる距離が1つに限定されるため、遠くと近くの両方を裸眼で快適に見ることはできません。
多焦点眼内レンズ
多焦点眼内レンズは、遠方・中間・近方と複数の距離に焦点を合わせられるよう設計されたレンズです。遠くから手元までをバランスよく見ることができるため、日常生活で眼鏡を使う頻度を減らしたい方に選ばれています。
一方で、複数の焦点を持つ構造上、光が分散しやすく、夜間の光のにじみ(ハロー・グレア)を感じる場合があります。また、単焦点レンズと比べてコントラスト感度がやや低下することがある点にも注意が必要です。
多焦点眼内レンズは自由診療の対象となることが多いですが、選定療養対象のレンズであれば保険診療の適用となることもあります。医療機関によって取り扱うレンズの種類は異なります。例えば、秋葉原白内障クリニックで取り扱っている多焦点眼内レンズのラインナップは以下の通りです。
- インテンシティ[自由診療]:遠方から近方まで幅広く焦点を合わせられるよう設計された5焦点型レンズ
- ファインビジョン[自由診療]:多焦点の中でも手元の見え方に優れた3焦点型レンズ
- AT LISA tri[自由診療]:製造範囲が広く、強度近視や強度乱視に対応できる3焦点型レンズ
- クラレオン パンオプティクス[選定療養対象]:遠方・中間・近方をバランスよく見ることを目的とした3焦点型レンズ
- クラレオン ビビティ[選定療養対象]:多焦点眼内レンズのデメリットを軽減し、同時に単焦点眼内レンズのメリットも持ち合わせた波面制御型焦点深度拡張レンズ
秋葉原白内障クリニックでは、患者さまお一人おひとりの生活スタイルに合わせ、適したタイプをご提案しています。
乱視矯正用トーリックレンズ
乱視矯正用トーリックレンズは、角膜のゆがみ(乱視)を補正するために設計された眼内レンズです。乱視があると焦点が一点に集まらず、視界がぼやけたり二重に見えたりすることがあります。このレンズは乱視の方向や度数に合わせて作られており、視界のにじみを軽減させ、より自然でくっきりとした見え方を実現します。
トーリックレンズには単焦点タイプと多焦点タイプの両方があり、患者さまの視力状態や希望に応じて選択されるのが一般的です。適切な効果を得るためには、角膜の形状や乱視の方向を正確に測定する検査が必要です。
眼内レンズ選びで考慮すべきポイント
眼内レンズは、どの距離に焦点を合わせたいか、どのような生活スタイルを送っているかによって、適した種類が異なります。例えば、運転や屋外活動が多い方は遠くに焦点を合わせる単焦点レンズが向いている一方で、パソコン作業や読書が中心の方は近方を重視したレンズを選ぶことが多いです。遠方・中間・近方のいずれも快適に見たい場合は、多焦点レンズが候補となると考えられます。
また保険診療・自由診療の違いから、費用面でも差が生じる点を考慮しておきましょう。単焦点レンズは健康保険が適用され、自己負担は一部のみとなりますが、多焦点や乱視矯正レンズは自由診療となり、全額自己負担です。価格もレンズごとにそれぞれ異なります。そのため、見え方の特徴と術後の利便性、費用を総合的に比較して検討することが大切です。 さらには目の状態やライフスタイルによっても適応が異なるため、医師と十分に相談し、納得した上で決定することが重要です。術後の見え方の満足度を高めるためにも、事前の診察で疑問点を解消しておきましょう。
秋葉原白内障クリニックのレンズ選定プロセス
秋葉原白内障クリニックでは、手術前に複数の検査とカウンセリングを通じて、患者さまお一人おひとりに適したレンズを提案しています。術前には精密検査を行い、現在の目の状態を正確に把握。その上で、スタッフが生活スタイルや趣味などを丁寧にヒアリングします。
その後は検査結果とヒアリング内容を元に、単焦点・多焦点・乱視矯正などの複数のレンズから適切なタイプを提案します。
このように、同院では医療的なデータと患者さまの希望を組み合わせた「オーダーメイドのレンズ選定」を行い、術後の満足度を高める取り組みを行っています。分からない点はカウンセリングで質問できる、不安を解消した状態で手術を検討できる体制です。
まとめ
白内障手術で使用される眼内レンズには、単焦点・多焦点・乱視矯正の3種類に分けられ、それぞれ見え方に違いがあります。どのレンズを選ぶかによって術後の視界の快適さや生活のしやすさが変わるため、自分の目の状態やライフスタイルに合ったレンズを選ぶことが大切です。
レンズの特徴や費用の違いを理解した上で、医師としっかり相談しながら決定することで、より納得のいく結果が得られるでしょう。手術後の見え方に関して不安がある場合は、事前に疑問を解消しておくことも重要です。
秋葉原白内障クリニックでは、豊富な検査データと丁寧なカウンセリングを通じて、患者さまお一人おひとりに適したレンズ選びをサポートしています。白内障手術を検討している方、どのような種類のレンズが自分に合っているのか知りたい方は、ぜひお気軽にご相談ください。
記事監修者について

眼科医 原田 拓二
医療法人社団廣洋会理事長
グループクリニックにて毎年2,000人を超える白内障患者の診察に従事。
また、年間700件以上のYAGレーザー治療(後発白内障)を行い、あらゆるタイプの白内障の術前・術後診療に精通する。
