2025年12月13日
白内障による見え方の変化は、初期のうちは自覚しづらいものの、進行すると少しずつ生活に支障を来すようになります。「視界がかすむ」「全体が白っぽく見える」「光がまぶしい」「色がくすんで見える」といった症状は、目の中の水晶体が濁ることで起こる白内障の代表的なサインです。初期のうちは老眼や疲れ目と勘違いされるケースもありますが、進行すると読書や運転、外出時の安全確認などにも影響が出る可能性があります。
本記事では、白内障による見え方の特徴や進行による違い、そして治療によってどのように視界が変化するのかを詳しく解説します。ご自身やご家族の見え方に違和感を覚えた方は、早期の受診や治療判断の参考にしてください。
この記事で分かること
- 白内障の進行による見え方の違い
- 見え方が変化した際に考えられる要因
- 白内障治療に期待できる視界の変化
白内障とは?
白内障は目の中にある「水晶体」と呼ばれるレンズが濁ることで、視界がかすんだりぼやけたりする病気です。水晶体は、カメラのレンズのように光を取り込み、ピントを合わせる働きをしています。この部分が加齢などの影響で濁り、光がうまく通らなくなることで、見え方にさまざまな支障が生じるのです。 主な原因は加齢ですが、糖尿病や外傷、ステロイド薬の長期使用、紫外線の影響などが関係する場合もあります。特に60代以降では多くの人に白内障の初期変化が見られるため、加齢に伴う自然な変化の一つといえるでしょう。
白内障の症状は見え方の変化として現れる
白内障が進行すると、ものの見え方にさまざまな変化が現れます。視界が白くかすむ、全体がぼやけて見える、光がまぶしく感じる、二重に見える、コントラストが低下して輪郭がはっきりしないなどが代表的な症状です。
また白内障にはいくつかの種類があり、それぞれで特徴的な見え方があります。例えば「核性白内障」は水晶体の中心部が濁るタイプで、全体的に黄色味が掛かって見えやすく、色の区別が付きにくくなります。「後嚢下白内障」は中心の後ろ側が濁るタイプで、まぶしさを強く感じやすく、昼間や逆光で特に見えにくくなるのが特徴です。「皮質白内障」は周辺部から白い筋のような濁りが広がるため、光がにじんだり明るい場所で視界が白っぽくなったりすることがあります。 このように、白内障では単に視力が落ちるだけではなく見え方そのものの質が変化します。眼鏡を新しくしても改善しない場合や、以前と比べて光の感じ方が違うと感じたときは、早めに医療機関を受診して原因を確認することが大切です。
【進行度別】白内障になった場合の見え方
白内障の方の見え方は進行の度合いによって大きく異なり、症状が重度になると生活にも影響します。
初期のうちは一時的なかすみやまぶしさを感じる程度でも、少しずつ視界の透明感が失われ、光の感じ方や色の見え方に変化が現れます。進行に伴って白いもやが掛かったような見え方になり、視力そのものだけではなくものの「見え方の質」も低下していくでしょう。
こうした変化は濁りが生じる場所や範囲によっても違いがあります。例えば中心部が濁ると、視界の中心がぼやけて細かい文字が読みづらくなるでしょう。周辺部が濁ると、外から入る光が乱反射してまぶしさを強く感じるようになるはずです。濁りが広がると、視界全体に薄い膜が掛かったように感じ、輪郭や色の区別が付きにくくなることもあります。 このように白内障は、進行の状況によって見え方が少しずつ変化する病気です。日常生活の中では「照明を明るくしても見えにくい」「夕方や夜間に視界が暗く感じる」「以前より色の鮮やかさが失われた気がする」といった小さな違和感から始まるケースが多く、早い段階で気づくことが大切です。初期段階・進行段階それぞれの見え方の特徴をご紹介します。
初期段階での見え方の特徴
初期の白内障は水晶体の濁りがまだ軽く、視界の中心よりも周辺部にわずかに変化が見られる程度の見え方になります。そのため見えづらさは断続的で、日によって症状が気になったり気にならなかったりします。視界が白っぽくかすむ、光がまぶしく感じる、夕方や夜になると見えづらいといった軽い違和感が生じるのが特徴です。
特に夜間の運転では、対向車のヘッドライトをまぶしく感じることや、対向車との距離感をつかみにくくなることがあります。また新聞やスマートフォンなどの細かい文字が読みにくくなっても、照明を明るくすると一時的に改善することがあります。そのため「疲れ目かな」「老眼が進んだだけ」と思い込みやすく、白内障の初期変化に気づかないまま過ごしてしまう人も少なくありません。
この段階で受診すれば、進行を遅らせる点眼治療などが検討できる場合もあります。見え方に軽い違和感を覚えたときは、早めに医療機関で検査を受け、進行の有無を確認しておくことが大切です。
進行段階での見え方の特徴
白内障が進行すると、水晶体の濁りが広範囲に及び、視界全体に影響が出てきます。見えるもの全体が白くかすみ、光がにじんで見える、あるいは色が黄色くくすんで見えるようになるのが特徴です。これにより青空がやや灰色がかって見えたり、紅葉の赤が鈍く感じられたりと、色彩の鮮やかさが失われていきます。
また光の拡散によるまぶしさが強くなり、日中の外出時や夜間の車のライトなどで強い不快感を覚えることもあります。コントラストが低下するため、暗い場所で段差や障害物が見えにくくなり、転倒のリスクが高まるでしょう。仕事や家事などの細かい作業にも支障が出やすくなり、視力の低下が進むと、眼鏡を掛けても改善しなくなることが増えてくると考えられます。 この段階では、生活の質を維持するために手術を選択するケースが多いです。白内障手術では濁った水晶体を取り除き、代わりに人工の眼内レンズを挿入すれば、視界の明るさや色の鮮やかさを取り戻せると期待できます。進行を放置せず、医師と相談して治療の時期を見極めることが大切です。
見え方が変化したときに白内障以外に考えられる要因
白内障による見えづらさは、他の目の病気でも似たような症状が現れることがあります。例えば「視界がかすむ」「まぶしい」「ものが二重に見える」といった変化は、必ずしも白内障だけが原因とは限りません。
代表的なものとして挙げられるのが、緑内障・加齢黄斑変性・糖尿病網膜症などです。緑内障では、視界の一部が欠けたり狭くなったりする「視野障害」が起こりますが、初期は自覚しにくく、白内障のようなかすみと勘違いされることがあります。また加齢黄斑変性は、視界の中心がぼやけたり歪んで見えたりするのが特徴で、新聞や人の顔の中央が見えにくくなることがある病気。糖尿病網膜症の場合は、血糖値のコントロールが不十分な状態が続くことで網膜に出血やむくみが生じ、視界全体がかすんだり黒い影が見えたりします。
これらの病気はいずれも放置すると視力の回復が難しくなるため、見え方に違和感を覚えた時点で早めに医療機関を受診することが大切です。白内障かどうかは、医師による細隙灯顕微鏡(さいげきとうけんびきょう)検査などで確認できます。専門的な検査では、網膜や視神経の状態まで詳しく確認できるため、白内障とそれ以外の病気を正確に区別することが可能です。
「年齢のせいだから仕方がない」と思わず、見え方に少しでも変化があれば、まずは原因を確かめることが何より重要です。早期発見・早期治療によって、視力を守れる可能性は大きく広がります。
白内障の治療によって見え方はどう変わるの?
白内障の治療方法は大きく点眼と手術の2択です。初期のうちは点眼薬によって進行を緩やかにする治療が行われることが多いですが、濁った水晶体そのものを元に戻すことはできません。見え方を根本的に改善するには、手術によって濁りを取り除く必要があります。以下では、治療方法ごとの見え方の変化を紹介します。
点眼治療に期待される効果(現状維持)
点眼治療は、白内障の進行をできるだけ遅らせることを目的とした方法です。主に初期の段階で処方され、濁りの原因となるタンパク質の変性を抑える効果が期待されます。 しかし点眼治療では視力や見え方が劇的に改善するわけではありません。自覚症状が少ない段階のうちに医師の指導に従って継続的に点眼を行うことで、進行を抑え、生活への影響をできるだけ抑える方法といえます。
白内障手術に期待される効果(改善)
白内障手術は、濁った水晶体を取り除き、代わりに人工の眼内レンズを挿入する治療です。手術によって光の通り道が再び透明になり、多くの方が「白っぽく見えていた景色がクリアになった」「青空や緑が以前より鮮やかに見えるようになった」と実感します。
手術直後はまぶしさやピントのずれを感じる場合がありますが、これらは一時的なもので、多くは数日から数週間で落ち着きます。炎症や眼圧の変化が原因で起こる可能性もあり、術後は医師の指導に従って経過観察を続けることが大切です。
見え方の回復には個人差があり、眼の状態や眼内レンズの種類によっても結果が異なります。
単焦点眼内レンズの見え方の特徴
単焦点眼内レンズは、健康保険が適用される一般的な眼内レンズです。焦点を1カ所(遠く・中間・近くのいずれか)に合わせる仕組みのため、焦点以外の距離にピントを合わせる場合は近くがぼやけて見えます。焦点以外の距離を注視する際は、眼鏡が必要となるでしょう。仕事や生活スタイルに応じて焦点距離を決めることが多く、運転や外出が多い人は遠方に、読書や手元作業が多い人は近方に合わせるのが一般的です。 なお、乱視を矯正できるタイプの単焦点眼内レンズもあり、秋葉原白内障クリニックでは乱視のある方はすべての症例で乱視矯正レンズを使用しております。
多焦点眼内レンズの見え方の特徴
多焦点眼内レンズは選択肢が豊富なため、ライフスタイルや視力のバランスに合うものを選んで使用できます。
多焦点眼内レンズは、遠・中・近などの複数の距離にピントを合わせられる構造になっており、裸眼での見える範囲が広がります。眼鏡を使わずに生活できるケースも多く、デスクワークや家事、外出などでの利便性が高まるでしょう。
白内障手術後に注意が必要な見え方の変化
手術後の一時的な見えづらさやまぶしさは多くの人に見られますが、異常に長引く場合は、合併症の可能性があります。代表的なものに、角膜のむくみによって視界がぼんやりする「角膜浮腫」や、一時的に眼圧が上昇して見えづらくなる「術後高眼圧」があります。細菌感染による「術後眼内炎」が起こることもまれにあり、急な視力低下や痛みを感じた場合はすぐに医師へ相談が必要です。
また手術後しばらくしてから「後発白内障」と呼ばれる、再び視界がかすむ症状が現れることもあります。これは白内障の再発ではなく、レーザー治療で簡単に改善できるケースがほとんどです。
さらには、こちらもまれではありますが、眼内レンズの位置がずれてピントが合わなくなる「眼内レンズの偏位」なども起こる可能性があります。どの症状も早期に対応すれば改善するケースが多いため、術後の見え方に異常を感じた場合は、自己判断せず速やかに医療機関を受診することが大切です。
秋葉原白内障クリニックの白内障手術
秋葉原白内障クリニックでは、患者さまお一人おひとりの目の状態や生活スタイルに合わせた白内障手術を行っています。短時間で安全性に配慮した手術を実現しており、痛みや不安をできるだけ軽減できるよう、経験豊富な医師が対応します。手術は原則として日帰りで受けられ、翌日から普段の生活に戻る方も多いです。
術後の見え方に対する工夫
秋葉原白内障クリニックでは、手術後の見え方に対する満足度を高めるため、術前のカウンセリングを重視しています。専任のスタッフが患者さまのライフスタイルや趣味、仕事での視作業の内容を丁寧にヒアリングし、それぞれに適した眼内レンズをご提案。例えばデスクワーク中心の方には中間距離に焦点を合わせやすいレンズを、外出や運転の多い方には遠方重視のレンズをおすすめするなど、個別対応を徹底しています。
また手術後は眼帯で目を覆う必要がなく、透明な保護ゴーグルを装着したまま歩いて帰宅できます。視界を確保しながら安全に移動できるでしょう。
取り扱っているレンズの種類
秋葉原白内障クリニックでは、保険適用から自由診療まで幅広い眼内レンズを取り扱っています。患者さまの希望や生活環境に合わせ、適切なレンズを選択できる体制を整えています。ラインナップは以下の通りです。
- インテンシティ(自由診療):高いコントラスト感度を維持しつつ、遠方・遠中(133cm)・中間(80cm)・中近(60cm)・近方(40cm)の5焦点に対応。自然な見え方を実現
- AT LISA tri(自由診療):光の分配効率に優れ、夜間でも安定した見え方を維持できる3焦点レンズ。適応範囲が非常に広いことが特徴
- ファインビジョン(自由診療):遠方・中間距離(約75cm)・近方(約35cm)の3焦点を持ち、バランスのとれた見え方が特徴。手元の作業を重視したい方向け
- クラレオン パンオプティクス(選定療養対象):遠方から近方まで幅広い距離にピントを合わせやすく、自然な色の見え方が得られる3焦点レンズ
- クラレオン ビビティ(選定療養対象):遠方から中間距離までの見え方を重視したレンズ。夜間のにじみを抑えたい方向け
これらのレンズはいずれも、患者さまの希望や生活習慣に合わせた見え方の改善を目的としています。医師と相談しながら選択するのがおすすめです。 なお、自由診療とは健康保険の適用外で全額自己負担となる治療のことを指し、費用は医療機関ごとに異なります。一方の選定療養は、保険診療と自由診療を組み合わせて受けられる制度で、差額分のみ自己負担となる仕組みです。実際の費用や適用条件については、診察時に確認すると良いでしょう。
まとめ
白内障は加齢と共に誰にでも起こり得る進行性の病気であり、放置すると視力の低下だけではなく運転や読書、外出など日常生活の質を大きく下げる恐れがあります。見え方が「少しかすむ」「まぶしく感じる」といった段階でも、早めに医療機関を受診すれば、進行を抑えたり適切な治療のタイミングを見極めたりできるはずです。
白内障手術は現在、精度が大きく向上しており、多くの方が「視界が明るくなった」「色が鮮やかに見えるようになった」と改善を実感しています。治療方法やレンズの種類も選択肢が増えており、生活スタイルに合わせた見え方の回復が期待できます。 見え方に違和感を覚えたときは、自己判断で様子を見るのではなく、専門医に相談することが大切です。秋葉原白内障クリニックでは、お一人おひとりの症状や希望に合わせた丁寧な診察と説明を行っています。気になる症状がある方は、どうぞお気軽にご相談ください。
記事監修者について

眼科医 原田 拓二
医療法人社団廣洋会理事長
グループクリニックにて毎年2,000人を超える白内障患者の診察に従事。
また、年間700件以上のYAGレーザー治療(後発白内障)を行い、あらゆるタイプの白内障の術前・術後診療に精通する。
