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多焦点眼内レンズが向かない人とは? 単焦点との違い・費用・レンズを選ぶ際のポイントを解説

2025年11月30日

白内障の手術では、視力回復だけではなく「快適な見え方」を重視してレンズを選ぶ方が増えています。従来の「単焦点眼内レンズ」に加え、遠くも近くも見やすくする「多焦点眼内レンズ」を希望する方も少なくありません。 しかし、多焦点眼内レンズは全ての人に適しているわけではなく、目の状態や生活環境によっては向かないケースもあります。 本記事では、自分に合うレンズを理解し、納得して選ぶためのポイントを解説します。単焦点との違いや費用の考え方も含め、後悔しないための判断材料としてご活用ください。

この記事で分かること

  • 多焦点眼内レンズと単焦点眼内レンズの違い
  • 多焦点眼内レンズが向かない人・向いている人の特徴
  • レンズを選ぶ際に確認すべきポイントと費用の考え方

多焦点眼内レンズとは?

白内障手術では、濁った水晶体を取り除き、代わりに人工のレンズ(眼内レンズ)を挿入します。多焦点眼内レンズはその一種で、遠く・中間・近くなど複数の距離にピントを合わせられる仕組みのレンズです。これにより、眼鏡に頼らず生活できる場面が増えるなど、利便性の向上が期待できます。

ただし、人によっては光のにじみ(ハロー・グレア)やコントラストの低下を感じる場合があります。

単焦点眼内レンズとの違い

単焦点眼内レンズは、焦点が一カ所に固定されるタイプのレンズです。多焦点眼内レンズと違い、遠くを見るか、近くを見るかのどちらかに焦点を合わせる設計のため、日常生活では眼鏡を併用するケースが多くなります。一方で、見え方が安定しやすくコントラストもはっきりしているため、夜間運転など細かな視認性が求められる場面に向いています。

なお公的保険が適用されるのは原則として単焦点眼内レンズまでであり、多焦点眼内レンズは自由診療または選定療養の対象となります。秋葉原白内障クリニックでも、適応検査の上で複数の多焦点眼内レンズを取り扱っています。

多焦点眼内レンズ手術後の見え方と慣れ

多焦点眼内レンズの手術後は、複数の焦点に目や脳が慣れるまで、一定の時間を要することがあります。特に手術直後はピントの切り替えがスムーズにいかず、見え方に違和感を覚える場合も多いです。

光のにじみやコントラストの低下を感じることがありますが、多くの場合は時間の経過と共に軽減するとされています。これは「神経順応」と呼ばれる過程で、脳が新しい焦点の切り替えに慣れていくことによって生じます。順応の期間には個人差があり、数週間から数カ月かけて安定するケースもあるでしょう。

焦らず医師の指導を守り、適応を超える症状や見え方の不安がある場合は、早めに再診・相談することが大切です。

多焦点眼内レンズが向かない人の特徴

多焦点眼内レンズは、遠くから近くまで幅広い距離を見やすくできる利点がありますが、全ての人に適しているわけではありません。目の状態や生活環境によっては、単焦点眼内レンズの方が安定した視力を得られるケースもあります。

特に角膜や網膜の状態、視覚の感じ方などに影響する要因がある場合は、見え方に違和感を覚えやすいでしょう。ここでは、多焦点眼内レンズが向かないとされる主な特徴について解説します。

なお適応の可否はあくまで個人の目の状態によって異なります。術前の精密な検査とカウンセリングを通じて、医師と相談しながら自分に合ったレンズを見極めることが大切です。

1. 乱視が強い人

乱視が強い場合は焦点が合いにくく、視界がぼやけたり、光がにじんで見えたりすることがあります。多焦点眼内レンズでは複数の焦点を利用して見るため、乱視があるとそのバランスが崩れ、見え方に違和感が生じやすいとされています。

乱視を矯正できる「トーリック多焦点眼内レンズ」というものもありますが、全てのケースに適応できるわけではありません。角膜の形状や乱視の軸などを正確に測定し、医師が適応を慎重に判断します。「乱視がある=多焦点眼内レンズが使えない」というわけではなく、検査を行って医師と相談しつつ適否を見極めることが重要です。

2. 網膜や角膜に疾患がある人

網膜や角膜に疾患がある場合、多焦点眼内レンズの効果を十分に得られないことがあります。網膜は「光を感じて映像を脳へ伝える膜」であり、視力の質を左右する重要な組織です。網膜に異常があると、レンズの性能にかかわらず、視覚情報が正しく伝わらなくなることがあります。

例えば加齢黄斑変性では視野の中心が歪んで見えることが、糖尿病網膜症では出血や浮腫によって視界がかすむことがあるでしょう。これらの疾患を持つ場合、焦点が複数に分かれる多焦点眼内レンズでは十分なコントラストが得られず、見え方が不安定になりがちです。そのため、単焦点眼内レンズの方が視覚の安定が期待できるケースもあるでしょう。

また角膜疾患(角膜混濁・外傷・強いドライアイなど)がある場合も、光の通り方に影響し、手術適応外となることがあります。さらにはぶどう膜炎などの炎症性疾患を持つ方も、手術が不可能なケースがあるので確認が必要です。

3. コントラスト感度が低下している人

コントラスト感度とは、明るい部分と暗い部分の差を見分けたり、物の輪郭を識別したりする能力を指します。たとえ視力検査での数値が良好でも、この感度が低下していると、全体的にぼんやりとした見え方になることがあります。一般的なコントラスト感度低下の要因は、加齢や角膜の混濁、網膜疾患などです。

多焦点眼内レンズは、光を複数の焦点に分散させる仕組みのため、元々コントラスト感度が低い人では、見え方の鮮明さがさらに下がってしまいます。その結果「全体的にかすんで見える」「くっきりしない」といった違和感を覚えることもあるでしょう。

加齢や角膜の混濁、網膜疾患などによって感度が低下している場合には、単焦点眼内レンズの方が見え方が安定することもあります。手術前の適応検査では、コントラスト感度の測定も行われるため、その結果を踏まえて医師と相談しながら適切なレンズを選ぶことが大切です。

4. 夜間運転や暗所作業を行う機会が多い人

多焦点眼内レンズは、光を複数の焦点に分ける構造のため、夜間にライトや街灯の光がにじんで見えたり、光の周りに輪がかかって見えたりする現象が生じることがあります。

そのため、仕事で夜間に長時間運転をすることの多い人や、暗い場所での作業を日常的に行う人は、こうした光の見え方の変化が支障となるでしょう。特に夜間の視認性が重要な職業や生活環境では、単焦点レンズや他の焦点設計を検討することも選択肢の一つです。

生活スタイルに合わせて見え方の優先順位を考え、事前に医師と相談しておくことが大切です。

5. 手元での作業が多い人・強度近視の人

多焦点眼内レンズは、遠くから近くまで幅広い距離を見やすいように設計されていますが、どの距離でも完全に鮮明に見えるわけではありません。特に、デザイナーやプログラマー、カメラマンなどの手元を長時間集中して見る作業が多い方の場合は、細かい文字や物の輪郭がわずかに見えにくく感じ、仕事に支障を来す可能性があります。

また強度近視の方はピントの変化が大きくなるため、焦点が複数に分かれる多焦点眼内レンズに違和感を覚えることがあるでしょう。見え方のバランスを重視するか、特定の距離での明瞭さを重視するかを、医師と十分に相談して決めることが大切です。

6. 若い頃のような見え方を求める人

多焦点眼内レンズは、遠く・中間・近くをバランスよく見えるよう設計されていますが、どの距離でも完全に鮮明に見えるわけではありません。若い頃のように、目が自然に焦点を切り替えて調節する「調節力」を再現できるものではない点を理解しておく必要があります。

そのため「眼鏡を全く使わずに過ごしたい」「若い頃の見え方を取り戻したい」といった希望には必ずしも応えられるわけではありません。多焦点眼内レンズの満足度を上げるためには、見え方の性質を理解し、自分の生活スタイルに合った選択が求められるでしょう。

7. 見え方の違和感を自覚しやすい人

多焦点眼内レンズは光を複数の焦点に分散させる仕組みのため、光のにじみや焦点のズレなど、わずかな見え方の違和感が生じることが前提です。術後は見え方の特徴に順応する「慣れ」の期間が必要となりますが、違和感を強く意識しやすい人や神経質な性格の人の場合、慣れるまでに時間がかかる場合があります。

また「何日後に違和感が完全にゼロになる」といった基準はなく、徐々に脳が適応していく過程があると理解しておくことが大切です。

手術前に見え方の特性や起こり得る変化について十分に説明を受け、納得した上で選択することが、後悔を防ぐポイントです。

多焦点眼内レンズが向いている人の特徴

多焦点眼内レンズに向かない人がいる一方で、レンズの使用により快適な視界を得られる人も多くいます。複数の距離にピントを合わせられる多焦点眼内レンズは、以下のような人に向いています。

眼鏡をできるだけ使いたくない人

多焦点眼内レンズは、さまざまな距離にバランスよく焦点を合わせられるため、日常生活で眼鏡のかけ外しを減らしたい人に向いているでしょう。新聞を読んだり、買い物で価格表示を見たりといった場面で、眼鏡を使う頻度が少なくなる点が大きな利点です。 ただし、完全に眼鏡が不要になるというわけではありません。細かい文字を長時間読む場合など、一部の場面では補助的に必要になる場合もあります。眼鏡を使う機会が減る利便性もありながら、その都度、見え方に合わせた対応が必要になることは理解しておきましょう。

夜間視力が必要ない人

多焦点眼内レンズ特有の特性を理解した上で、夜間の視認性を特に重視しないライフスタイルの方であれば、多焦点眼内レンズの利点をより生かしやすくなります。

例えば、日中の活動が中心で、夜間に運転をしない人や屋内で過ごす時間が長い人は、光のにじみの影響を受けにくく、快適に過ごせるケースが多いと考えられます。多焦点眼内レンズの特性をしっかりと理解した上で選択できれば、日常生活での満足度を高められるでしょう。

遠くも近くもバランスよく見たい人

前述してきた通り多焦点眼内レンズは、複数の距離にピントを合わせられるため、日常生活のあらゆる場面で快適な見え方を重視する人に適しているといえるでしょう。

例えば、外出時に遠くの標識を確認し、室内ではパソコン作業や読書を行うといったように、異なる距離のものを見る作業が多い人にとって大きな利点があります。特定の距離での明瞭さを追求するよりも、全体的にバランスの取れた見え方を希望する人に向いています。活動的なライフスタイルの方にも適しているといえるレンズです。

見え方の特性を理解し、順応できる人

多焦点眼内レンズは、初期の違和感に理解があり、慣らし期間を受け入れられる人に向いています。

見え方が安定するまでには個人差があるため、焦らず時間をかけて順応していくことが大切です。繰り返しになりますが、医師から説明される見え方の特性を十分に理解し、納得した上でレンズを選ぶ姿勢が、術後の満足度を高めるポイントです。

秋葉原白内障クリニックで扱う多焦点眼内レンズの種類

秋葉原白内障クリニックでは、患者さまの目の状態や生活スタイルに合わせて複数の多焦点眼内レンズを取り扱っています。代表的なものは、インテンシティ、AT LISA tri、ファインビジョン、クラレオン パンオプティクス、クラレオン ビビティなどがあります。

例えば、AT LISA triやファインビジョンは「3焦点眼内レンズ」に分類され、遠方・中間・近方の3つの距離に焦点を合わせられるタイプです。一方、クラレオン ビビティは「焦点拡張型レンズ」と呼ばれ、遠方から中間までがより自然に連続的に見えるよう設計されています。

どのレンズを選ぶかは、患者さまの生活スタイルや希望する見え方(遠く重視・手元重視など)によって異なります。実際の選定時は、適応検査の結果と医師の診断を踏まえ、十分なカウンセリングの上で決定しましょう。

多焦点眼内レンズ手術の費用の考え方

多焦点眼内レンズは、保険適用となる単焦点眼内レンズに比べて高度な機能を持つため、費用の考え方が異なります。

通常の白内障手術は保険診療として受けられますが、多焦点眼内レンズを選ぶ場合は、自由診療として全額自己負担となるのが一般的です。また保険診療と自由診療を併用できる「保険外併用療養費制度」という制度の中に「選定療養」という枠組みがあり、適用されると自己負担額が一部軽減されます。以下で、制度の概要と費用の目安について詳しく説明します。

選定療養の概要

選定療養とは、公的医療保険の対象となる治療(保険診療)に、患者さまが希望する高度な医療技術や材料を一部自由診療として組み合わせられる枠組みです。白内障手術では特定のレンズを使用する場合に限り、手術そのものの費用や入院費などの基本部分は保険適用となり、使用するレンズの差額のみが自己負担となります。

この制度は厚生労働省によって定められた公的な仕組みであり、一定の条件を満たす医療機関でのみ実施できます。多焦点眼内レンズを希望する場合は、選定療養に対応している施設かどうかを確認し、費用の詳細についても事前に相談することが重要です。

費用の目安と負担範囲

選定療養制度を利用するのであれば、先述の通り、保険診療分に加えレンズ差額分を自己負担する形となります。片目当たりの費用は30万円台が目安であり、両目ではその2倍程度となるでしょう。

選定療養を利用すると、完全な自由診療で手術を行うよりも経済的負担を抑えながら、多焦点眼内レンズを選択できます。また白内障手術にかかる費用は、条件を満たせば医療費控除の対象となる場合もあります。費用面も含め、事前に医師やスタッフへ確認しながら検討することが大切です。

白内障手術に用いるレンズを選ぶ際のポイント

白内障手術では、視力の回復だけではなく「生活の中でどのように見えたいか」を考えてレンズを選ぶことが大切です。近年はレンズの種類が増え、単焦点・多焦点・焦点拡張型など、患者さまの希望や生活スタイルに合わせて選べるようになりました。その分、どれを選べばよいか迷う方も少なくありません。

秋葉原白内障クリニックでは、複数のレンズの中から適応検査の結果や生活環境に応じて適したタイプを提案しています。ここでは、レンズを選ぶ際に押さえておきたい3つのポイントを紹介します。

事前の適正検査の結果に基づいて考える

レンズの選択は、まず「目の状態を正確に知ること」が始まりです。手術前には、角膜の形状や乱視の有無、眼底の状態、瞳孔の大きさ、涙の量などを総合的に評価する適正検査が行われます。これらの検査結果から、多焦点眼内レンズが適応できるかどうか、またどういったタイプのレンズが向いているかを判断します。

医師は検査結果と患者さまの希望する見え方のバランスを踏まえ、適したレンズを提案します。自分の目の特性を理解した上で選ぶことが、手術後の満足度を高める重要なポイントです。

さまざまなレンズを比較検討する

白内障手術で用いるレンズは、「機能が優れているか」ではなく、「自分の生活に合っているか」で選ぶことが大切です。単焦点眼内レンズと多焦点眼内レンズのそれぞれの特徴を理解し、さらには多焦点眼内レンズの焦点構造の違いなども細かく確認してください。自分の生活スタイルを踏まえて、複数のレンズを比較しながら検討することが、後悔のない選択につながります。

しっかりと希望を伝える

レンズの選定では、医師と仕事や趣味、活動時間帯といった日常生活の詳細を共有することも重要です。情報共有をしっかり行えば、医師の視点で、どのようなレンズが向いているかを提案してもらえるはずです。手術前の診察の時間は、単なる「選択のための面談」とするのではなく「後悔しないための事前理解を深める場」として捉えることをおすすめします。

まとめ

多焦点眼内レンズは、遠くから近くまで幅広い距離を見やすくし、日常生活の利便性を高める選択肢の一つです。しかし、全ての人に適しているわけではありません。乱視が強い場合や、網膜・角膜に疾患がある場合、またコントラスト感度の低下や夜間運転の多い生活環境では、見え方に違和感を抱くことがあります。

大切なのは、見え方に「完璧さ」を求め過ぎず、それぞれのレンズが持つ特性を理解した上で選ぶことです。多焦点眼内レンズは、生活の中でどの距離を重視したいかによって向き不向きが変わります。

不安や疑問がある場合は、医師による診察や適正検査を受けて、目の状態と生活スタイルに合ったレンズを選びましょう。

秋葉原白内障クリニックでは、複数の多焦点眼内レンズを取り扱い、患者さまお一人おひとりに合わせた丁寧な診療を行っています。見え方に関する相談がある方や手術の詳細について知りたい方は、どうぞお気軽にお問い合わせください。

記事監修者について

院長 原田 拓二

眼科医 原田 拓二

医療法人社団廣洋会理事長
グループクリニックにて毎年2,000人を超える白内障患者の診察に従事。
また、年間700件以上のYAGレーザー治療(後発白内障)を行い、あらゆるタイプの白内障の術前・術後診療に精通する。

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