2024年11月29日
こんにちは、はじめまして。
9月から秋葉原白内障クリニックで手術の執刀を担当している副院長の大上です。
今まで当院は通常の白内障手術しかおこなっておりませんでしたが、今後はより先進的な白内障手術や自分の得意とする網膜硝子体手術、緑内障手術も取り組める幅広い眼疾患に対応できるクリニックを目指してスタッフ一同取り組んでおりますので引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。
さて、このコラムを通じて当院の取り組みや眼科医療のトピックを発信できていけたらと考えております。
第1回は、白内障手術で使用される眼内レンズについてです。
白内障は目の中でレンズの働きをする水晶体が濁ってしまい見づらくなる病気です。
この濁りをもとに戻すお薬はないため、手術で濁りを取り除き、人工のレンズを入れる方法が唯一の治療法となります。
白内障手術の歴史や、濁りの取り方の変遷はまた別の機会にご紹介できればとおもいますが、今回は眼内レンズについてのお話です。
眼内レンズは、アクリルを主体とした人工物であるため、基本的にピント調節機能がありません。そのため、保険診療で使える単焦点レンズ(1箇所にピントが合うレンズ)では遠くも近くも見えるようにすることができず、遠くを見やすくするレンズを入れた場合は老眼鏡が、手元を見やすくするレンズを入れた場合は遠くを見る眼鏡が必要になります。
そこで、メガネを使う頻度を減らせるように開発されたのが多焦点レンズになります。
これは、特殊な設計のレンズで通過する光を遠方、近方などに分けることでメガネをかけなくても広い範囲が見やすくなるというすぐれものです(状況によっては補助的にメガネをかけたほうが見やすくなります)。
ただ、光を分けるためどうしてもエネルギーがロスします。
現在、主流となっている3焦点レンズ(遠方、中間、近方に焦点をあわせるレンズ)では約15~20%のエネルギーが損失すると言われています。
また、レンズの設計の影響で光に輪がかかったように見えたり(ハロー)、滲んで見えたり(グレア)することがありました。
そこで新しく開発されたレンズがインテンシティ(Intensity)です。
イスラエルのHanita社が開発したレンズですが、最新のコンピューター、AIも駆使したレンズの設計によりなんとこのレンズは5焦点レンズとなっております。
しかも、5箇所に光を分けるため3焦点よりもエネルギーがロスしそうですがなんと3焦点レンズよりエネルギーロスは少なく、わずか6%程度となっております。
また、前述したハロー・グレアも抑えられており現時点で最高の多焦点レンズと言っても過言ではないかとおもいます。
当院でもこのレンズを多数扱っており、ご好評頂いております。
先日もHanita社のマネージャーの方と会談を行いました。
なんとこのマネージャー、ご自分の目にもこのインテンシティをいれてあり遠くも近くもよく見えるとのことでした。(見え方がなれるのに1ヶ月程度かかったということも申し添えておきます)
残念ながら、イスラエルでは今紛争が行われてしまっておりますがHanita社ではインテンシティの工場を紛争地域から離れた場所に移設し、供給を続けているとのことです。
一刻も早く紛争が終結してくれることを願っております。
世界の最新のレンズの開発状況など情報交換し、とても有意義な夜でした。
多焦点レンズは保険適応ではないためコスト面で不利であり、また目の状況にもより全ての方に適応があるわけでは無いのですがご興味のある方がおられましたら一度ご相談いただければ幸いです。